2011年06月14日

寺子屋小山台福川塾長が産経新聞に取り上げられました



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 20年もの長きにわたり成長が止まっている日本経済は、3月11日の東日本大震災でさらに窮地に追い込まれた。悪いことに、政治混乱が低迷に拍車をかけ、復興のスピードは鈍い。しかし、今回の厄災を日本再生のきっかけにするという考え方もある。そのためにはどのような課題があるのか。基本的な考え方はどうあるべきか。戦後日本の高度成長を主導した旧通商産業省で事務次官を務めた福川伸次氏が、東北復興をバネに推進すべき「日本の改新」への道筋を提言する。

                   ◇

 ■TPP契機に第1次産業再構築

 □ピンチをチャンスに

 ◆「日本病」の根治は

 《1990年代以後、日本が徐々に活力を失い、魅力を低下させている。「日本病」ともいうべき病理現象に冒されている。この現象には「5つの病状」が折り重なっている。第1は危機感のまひ。公的債務残高が先進国最悪なのに、財政改革が進まない。第2は政策対応能力の低下。第3は企業の経営革新力の低下だ。さらに、第4は社会の連帯性の低下であり、第5は人々の価値観の硬直化だ。各国の日本への関心度は薄れ、その地位は低下するばかりだった》

 かつては「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称賛された日本。だが、守りに入り、多くの問題を先送りし続けた結果、震災直前に世界第2位の経済大国の座を中国に譲り渡した。

 その病身の日本を戦後最悪の震災が襲った。まさに最悪のタイミングといえるが、震災を契機に、良くも悪くも再び日本への注目が高まっている。

 《東日本大震災は、日本の危機管理と経済安全保障政策に対して警告を与えた。これを大手術する契機と考えなければ、多くの犠牲者に顔向けができない。対応を誤れば「日本病」は確実に悪化する。

 政治・行政・民間・学界の情報と英知を総結集して「全体最適」の仕組みを構築し「復旧」ではなく「復興」を軌道に乗せる。第1に危機管理体制を再構築し、第2にエネルギー政策を再編成する。そして、第3に復旧を越えて「日本の改新」に取り組むことだ》

     
◆地域特性を生かす

 東北6県の業種別就業人口を見ると第1次産業の比重の高さが分かる。全国平均4・8%に対して東北は10・9%。生産額ベースでコメの26%、果実の23%を生産する。漁業シェアはさらに高く、カツオが62%、サンマは55%。海藻類も36%を占める。その第1次産業が壊滅的打撃を受けた。

 福川氏は東北の特色を生かした、地域主導型の「復興の視点」を説く。

 《第1に観光需要の拠点作り。放射能汚染のイメージさえ払拭できれば東北三大祭りや温泉、スキー場を起爆剤に外国人観光客を呼び込める。第2は大規模化による農林水産業の拠点強化。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加は日本が避けることのできない問題で、国際競争力のある農業、畜産業、水産業を構築していく絶好のチャンスととらえた方が賢明だ》

 また、東北の部品工場の被災が世界の製造業に影響を与えたことでも分かるように、代替が効かない工業地帯でもある。

 《サプライチェーンの担い手である中小企業の充実強化。ベンチャー企業の集積を新生東北のアピールポイントにする。重要なのは、地元の人々、国民、企業の意欲と活力を引き出すことに尽きる》

 ◆財源対策は慎重に

 基本理念と並んで復興のカギとなるのは財源だ。被害はストックだけで16兆〜25兆円。原発被害の補償額を加味すればさらに数兆円が加わる。財政難の日本にとって復興財源の捻出は容易ではない。

 《日本の財政構造は先進国の中では最低の水準にあり、海外の投資家が日本の通貨や国債を投機の対象とする機会を虎視眈々(たんたん)と狙っている。

 増税は景気を冷え込ませないよう2〜3年の期間をおいて所得税の付加税を考える。その間は復興基金(仮称)を設け、期間限定の特定国債を発行して財源をつなぎ、将来の増税で償還する。しかし、消費税は低所得者ほど税負担が増える逆進性があり、被災地でも課税されてしまうので、回避しなければならない》


■「ベストミックス」で原発穴埋め

 □危機管理とエネ政策見直し

 ◆不備が生む被害

 原発事故に対する政府対応の不備を指摘する声は日増しに強まっている。政府が国家的な危機に対応しきれなかったことで被害は想定外に拡大。危機管理体制に大きな反省を与えた。

 《菅首相は5月、「東海地震の起こる確率が高い」として、中部電力の浜岡原子力発電所の運転停止を要請した。これは、今回の大震災の教訓を生かした事前的危機管理の例証として評価される。だが、阪神大震災や茨城県東海村で起きたJCO臨界事故などの経験が十分、活用されていたかどうか》

 東京一極集中の是非を問う声も強くなった。

 《東京圏は全人口の約30%、GDPの約40%を占める。そんな寡占状況の都市が直下型地震に襲われれば、経済への衝撃はすさまじい。首都機能を移す説もあるが、震災で悪化した財政状態で実現できる見込みはない。東京に防災対策を講じつつ、外に第2、第3のバックアップ体制を準備しておく必要がある》

 ◆発送電分離は尚早

 《福島第1原発を抱えた日本は、どうやってエネルギーの安定供給を図るのかということを世界は注目している。背景には石油が資源依存のピークを超え、40〜50年で枯渇することが現実味を帯びてきたこと、アフリカ、中東など産油国の政情不安が石油価格を基調にしている事情がある》

 原発の即時全面停止は非現実的だ。しかし、今後のエネルギー政策は、安全性、経済性、利便性を考慮した「ベストミックス」を基本とし、原発の穴を埋めて需要がまかなえるかどうかが焦点となる。

 《事業者向けの省エネルギー設備、太陽光発電、蓄電池などの導入補助を推進する。フレックス化やホームオフィスも考えて働き方を多様化する。また、電力の需要側にスマートメーターをつけて双方向通信を行う「スマートグリッド」は蓄電装置を開発して組み合わせれば効率化が進む》

地域を独占する「9電力体制」の見直しや、東京電力の国有化、発電会社と送電会社の分離案なども浮上しているが、福川氏は今はその時ではないとする。

 《東電には経営体制の改革と合理化が迫られる。だが政府が市場に介入する程度は最小限度であるべきで、企業活動は民間主導で展開した方が高効率。発電・送電の分離も、将来は検討の余地があるかもしれないが、当面、それを進めると事態を混乱させる》

 原発の安全対策では、政府や東電の「隠蔽(いんぺい)体質」が世界中から批判を浴びた。

 《信頼回復には国際原子力機関(IAEA)などによる国際的な判断を受け入れ、悪い部分は修正し、海外に発信していく取り組みを強化すべきだ》

 ◆温室ガス削減は困難

 温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減するという日本の国際公約は実現困難となったが、福川氏は京都議定書にある、排出量の上限を設定した排出枠を割り当てて、一部を取引する「キャップ・アンド・トレード」に疑問を呈する。

 《そもそも合理的な国別配分は不可能だ。国際的なルール作りではプレッジ(約束)&レビューという、各国が約束し、他の加盟国が実現状況を監視する方式が理解されつつある。守れない場合は各国が助言したり、技術のある国が支援し強制力は持たない。私はこれが限度だと思う》

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 ■政・官・民が協調し「知行合一」

 □イノベーションと日本改新

 ◆産業文明の転換期

 18世紀の産業革命に端を発する現代の産業文明は、資源埋蔵量の限界、地球温暖化の進行などで転換期を迎えつつある。福川氏は、決め手は「イノベーション力」で、情報通信技術(ICT)が牽引(けんいん)するという。

 《これまでの大量生産、大量消費という産業システムを効率生産、効率消費、完全循環に転換することが迫られている。産業革命以後のイノベーションは「プロダクトアウト」に特徴があった。企業が新技術や新製品を開発し、広報や販売促進活動によって市場に提供し、近代生産体制を支えた。しかし、ICTの進歩は「マーケットイン」を支援する》

インターネットの浸透で消費者が接する情報量は飛躍的に増えた。この結果、消費者が欲しいものを提供しなければ売れなくなった。

 《多様な消費者のニーズに牽引され、企業が製品やサービスを開発する、市場ニーズ先行型の供給体制だ。市場の主導権は供給サイドから需要サイドに移り、需要の多様化と個性化をもたらした》

 ◆国際社会への貢献

 今回の震災では政治の混乱による人災が強く指摘されている。震災対応そっちのけで政争に明け暮れる与野党に、被災地からは失望の声が相次いでいる。

 《民主党政権は行政や民間からの情報を遮断し、行政各部の個別案件まで政治家が判断する管理手法を取った。その結果、統治機能は低下し、震災はその弱さを突く結果となった》

 国際社会は多極化し、対立軸も複雑化している。日本は何をすべきか。

 《日本はグローバル・ガバナンスの定着に向け、貢献していくことが必須である。憲法の範囲内での集団安全保障と日米関係の信頼回復、アジア諸国との政治経済上の連帯強化、自由貿易体制の定着など課題は多い。

 しかし、最も大切なのは、ヒューマニズムに立脚した新しい産業文明の確立に挑戦することだ。その先頭に立って努力することこそ、時代が日本に期待する最大のものだ。政治、行政、企業などが協調して「知行合一」に努力すれば「日本の改新」は必ずや成功する》

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 福川氏の提言は、徳間書店から「緊急提言 日本人の復興力」として5月31日に出版された。

         
posted by 世話役 平出 at 22:50| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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